siseiryu美術館・博物館放浪記

今までに観に行った美術館・博物館などの記録です。

♯186 新・北斎展

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観 覧 日 : 2019年3月21日

会  場 : 森アーツセンターギャラリー

H  P : https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/hokusai/

展示作品 : 新・北斎

期  間 : 2019年1月17日 ~ 3月24日

料  金 : 1,600円 ・ 図録 2,800円

総展示作品数 : 前後期全479点

セクション(構成) : 6区画

 第1章:春朗期-デビュー期の多彩な作品 

 第2章:宗理期-宗理様式の展開

 第3章:葛飾北斎期-読本挿絵への傾注

 第4章:載斗期-『北斎漫画』の誕生

 第5章:為一期-北斎を象徴する時代

 第6章:画狂老人卍期-さらなる画技への希求


感想 :

葛飾北斎(1760~1849)は世界で最も知られた日本の芸術家の一人です。
江戸時代後期に浮世絵師として登場してから90歳で没するまでの約70年に及んだ北斎の画業は、常に新たな絵画の創造への挑戦の連続でした。度重なる画号の改名は有名ですが、画風もまた大胆に変え続けました。つまりは自らをUPDATEし続けた人生に他なりませんでした。
この企画展では、「冨嶽三十六景」や『北斎漫画』などの有名作だけに焦点を当てるのではなく、日本初公開となる貴重な作品を含めた北斎の全生涯にわたる画業を展観します。国内外に所蔵される北斎の名品・優品はもちろん、近年更新された主な研究成果を参照しつつ、発見・再発見されてきた作品を一堂に公開していました。


北斎の代表作としては、“Great Wave”と称されて世界的に名高い「神奈川沖浪裏」を含む「冨嶽三十六景」シリーズ、19世紀のヨーロッパにおけるジャポニスムの流行の契機となった『北斎漫画』などが一般的に知られていますが、これらは約70年に及ぶ北斎の画業のほんの一端にすぎません。
この企画展では北斎の絵師人生を作風の変遷と主に用いた画号によって6期に分けて紹介します。
勝川派の絵師として活動した春朗期(20〜35歳頃)、勝川派を離れて肉筆画や狂歌絵本の挿絵といった新たな分野に意欲的に取り組んだ宗理期(36〜46歳頃)、読本の挿絵に傾注した葛飾北斎(46〜50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた戴斗期(51〜60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した為一期(61〜74歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した画狂老人卍期(75〜90歳頃)と、その壮大な画業を通覧。国内外の名品、近年発見された作品、初公開作品を通じて、真の北斎に迫ります。


20歳のデビュー作から90歳の絶筆まで、本展に出品される作品数は約480件(会期中展示替えあり)。十数年ぶりに東京で開催される、大規模かつ網羅的な北斎展となります。国内外から集められた名品・貴重品によって、北斎の全貌を知ることのできる待望の機会でした。


多数の初公開作品を揃えていることも本展の特徴です。アメリカ・シンシナティ美術館が所蔵する「向日葵図」(肉筆画)は、北斎が88歳の時に描いたものですが、その凛とした姿には、衰えを知らない北斎のエネルギーがみなぎっています。また同館の「かな手本忠臣蔵」(小判、10枚)は近年発見された貴重なものです。旧津和野藩主家が所蔵していた摺物(非売品の特製版画)、大小暦も必見。118点を4期にわけて全点を公開しますが、いずれも長らく秘蔵されていたため、衝撃的なほどに美しい色彩をとどめています。


本展監修者・永田生慈氏は北斎研究のために作品の収集も行いました。作品数は2000件を超えます。それらは2017年に一括して、故郷の島根県に寄贈されました。そして氏の遺志により、本展に出品された後は、島根県のみで公開されることとなりました。つまり、本展は永田コレクションを東京で見ることができる最後の機会でした。


春朗期安永8年 ~ 寛政6年(1779~1794) 20~35歳頃
20歳で浮世絵界にデビュー。勝川春朗と名乗り、役者絵や挿絵本を手がけました。かつてこの時代は単なる習作の時代として、個性的な特徴に乏しいとみなされてきましたが、作品が発見されるにつれ、精力的な創作活動を展開していたこと、そして画狂人・北斎の原点として重要な時期と考えられるようになりました。


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第1章:春朗期《花くらべ弥生の雛形》

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第1章:春朗期~第2章:宗理期《津和野藩伝来摺物》全118枚より《楊貴妃小野小町、蓮華女》


宗理期寛政7年~文化2年(1795~1805) 36~46歳頃
勝川派を離れ、琳派の俵屋宗理の名を襲名した北斎は、浮世絵画派とは一線を画した活動を展開するようになります。優美な摺物(非売品の特製版画)や狂歌絵本の挿絵、肉筆画などを多く手掛けます。やがて「宗理美人」と呼ばれる楚々とした女性像を創造するなど、独自の様式を築きました。


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第2章:宗理期《美人愛猫図》

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第2章:宗理期《風流無くてなゝくせ》


葛飾北斎期文化2年~文化6年(1805~1809) 46~50歳頃
当時江戸で流行し始めた読本の挿絵に全力を傾注した時代。中国画的な力強い表現に洋風表現も取り入れた幻想的な画面によって「劇画的世界」を創りだしました。肉筆画では、若々しい少女のような様子から大人の色香漂う艶冶な美人像に変化していきます。一般によく知られた葛飾北斎を名乗ったのはこの時期です。


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第3章:葛飾北斎期《円窓の美人図》絹本額面

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第3章:葛飾北斎期-《鯉亀図》


戴斗期文化7年~文政2年(1810~1819) 51~60歳頃
文化7年に戴斗たいとと号した頃から、北斎の関心は絵手本に移ります。人気が高まるにつれ、増加する門人や私淑する全国の人々に、絵の手本を与えようとしたのだと考えられます。有名な『北斎漫画』を含む多彩な絵手本を矢継ぎ早に刊行します。それまで師から弟子へ肉筆で描き与えることが一般的であったなかで、大量の印刷本による手本は画期的なものでした。また数は少ないながらも、錦絵や肉筆でも新たな世界を切り拓いていきます。


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第4章:載斗期《東海道名所一覧》

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第4章:載斗期《北斎漫画》全15冊より初編 絵手本 半紙本


為一期文政3年~天保5年(1820~1834) 61~74歳頃
文政3年(1820)、61歳となった北斎は、号を為一いいつと改めます。そして70歳を過ぎると、「冨嶽三十六景」をはじめとした北斎を代表する錦絵の揃物を次々と生み出していきました。風景画、名所絵はもとより、花鳥画や古典人物図、武者絵、さらには幽霊などその関心はあらゆる対象に向けられました。驚くべきことに、これら色鮮やかな錦絵の出版はわずか4年間ほどに集中しています。


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第5章:為一期《百物語 こはだ小平二》

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第5章:為一期《冨嶽三十六景 凱風快晴》

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第5章:為一期《冨嶽三十六景 山下白雨》

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第5章:為一期《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》


画狂老人卍期天保6年~嘉永2年(1835~1849) 75~90歳頃
最晩年の北斎は肉筆画制作に傾注し、描くテーマも古典に取材した作品や花鳥、静物、宗教的な題材など浮世絵師の世界から離れ、独自の画境を追い求めていきます。長寿を願い、100歳まで生きれば「神妙」の域に達し、さらに描く対象の「一点一格」が生き生きとしたものになると信じ、筆を休めることはありませんでした。嘉永2年(1849)4月18日朝、北斎は90歳で生涯を終えます。「あと10年、いや5年命が保てば真正の画工になれたのに」と言い遺し、息絶えました。


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第6章:画狂老人卍期《向日葵図》紙本1幅

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第6章:画狂老人卍期《弘法大師修法図》紙本1幅

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第6章:画狂老人卍期《富士越龍図》


大概の人は知っている葛飾北斎
だれもが一度は教科書やら何かしらの絵を目にしているかもしれません、それほど有名な絵師ですね。
今回の企画展では生涯を通して作品が展示されており、その技法が徐々に変化するのではなく丸まる変わる様な進化をしている様に個人的には感じました。今まで何度も北斎の作品を観てきましたが飽きることはないなと感じます。今後もまたこのような企画展があれば観に行こうと思います。


葛飾北斎について詳しく知りたい方は、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B%E9%A3%BE%E5%8C%97%E6%96%8E
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次回の更新は2月中~下旬頃を予定しております。